前回の記事ではヴァンの観光スポットについてまとめました。
ヴァンの歴史やヴァン湖の詳細についてはこちらの記事をご参考頂くとして、本記事ではヴァンのローカルフードについてご紹介します。
トルコでは他に7都市に滞在しましたが、ヴァンはその土地柄、食文化もかなり独特だったように思います。
もちろんヴァンといえばヴァン湖、ヴァン湖といえば固有種のインジ・ケファリ!
ということで、インジ・ケファリが食べられるお店も紹介しています。その店を見つけた当時にTwitterで情報発信をしたところ、ヴァン在住の日本人から「どこで食べられたのですか⁉」と質問が来るほど、ヴァンのご当地料理については情報が不足しています。
実はこれからご紹介する料理の中にも、ヴァンを去ってから知ったために実際に食べられなかったものがあり、少し悔いが残っている私…
ですが、これからヴァンを訪れる皆さんはこの記事があるのでもう大丈夫!(笑)
なかなか訪れる機会のないヴァンのことです。 私と同じ轍を踏まないよう本記事で予習をした上でヴァン観光に臨みましょう。
【ギネス認定】ヴァンの朝食(Van Kahvaltısı)
まず知っておきたいのが、ヴァンの朝食文化。
その最大の特徴は、25~30品目(!)もの料理で構成されていて、そのすべてが地元の食材で作られていること。その盛大さは2014年にはギネスブックにも登録されたほどです。
ヴァン・チョレイ、ハーブチーズ、ニットチーズ、フェタチーズ、ミルククリーム、ヴァン産蜂蜜、ムルトゥーア、バターミルク(山羊や羊)、オリーブ、カヴット、ローズジャム、イリトメ(固ゆでの生卵)、スクランブルエッグ、ゲンチルン(gencirun)など。
また夏季にはヨーグルト、ザジキ、ピヤーズが、冬季にはペクメズ(pekmez、トルコの糖蜜)とタヒニ(Tahin)がメニューに加えられるなど、季節によっても違いがあります。
この朝食文化ですが、ヴァンがシルクロード沿いの要所にあり、行き交う旅人に宿や食事を提供する土地だったことにルーツがあると言われています。
ヴァンの朝食を提供しているレストランは多くあるのですが、私は今回滞在していたホテルで朝食がついていたので、そちらで済ませてしまいました(笑)
1回ぐらい街のレストランで食べておくべきだった、と後悔しきり。
ヴァンに来る機会などそう多くありませんので…
ですが、その中でもヴァンの朝食メニューとして有名な料理がありましたので、次にご紹介していきます。
他都市ではまず見られない料理ですので、見つけたらぜひトライしてみてください。
ヴァン・チョレイ(Van çöreği)
ドーナツとパンの中間的な食べ物、ヴァン・チョレイ。
材料としてはバター、卵黄、砂糖、塩、牛乳、糖蜜などで、外側の生地はオーブンで焼き色がつくまで焼かれていて少し厚めです。また中はクルミが入っていたりと詰まっているためズッシリと重く、数切れほど食べるとそれなりに満腹感を覚えます。
“唾液が吸い取られる系”のパンなので少し食べづらいですが、蜂蜜やペクメズ(糖蜜)などをかけて食べると良いです。
ムルトゥーア(Murtuğa)
油で揚げた小麦粉に卵を加えて炒めたムルトゥーア。クルミを混ぜることもあります。
見た目的にはハルワのようなスイーツかと思いきや、甘さはないので蜂蜜やペクメズをかけて食べるのが吉。
ヴァンはその地理的に何世紀も戦乱の続いた土地。そんな状況のなか、シンプルな食材でも満足のいく食べ物を作りたいという欲求から生まれたという逸話が残っています。
そういった背景があって“満腹感”を求めすぎたからか、意外と脂っこくて食べすぎるとムカムカします。たとえるなら揚げパンを食べまくった感じ…ご注意を(笑)
ハーブチーズ(Otlu Peyniri)
ヴァンを含むトルコ東部と南東部で200年以上前から食されているハーブ入りの熟成チーズ。
原料になるのはほとんどが羊の乳ですが、まれに牛や山羊のことも。伝統的には土製の立方体状の容器に入れ、地中に埋めて熟成させます。
ハーブとして使われるのはネギ(Allium)、 タイム(Thymus)、マンテマ(Silene)、オオウイキョウ(Ferula)など25種類。少しパサパサした食感と塩辛い味が特徴でした。
カヴット(Kavut)
カヴットとは焙煎した小麦を溶かしバターと炒めたヴァンのデザート。
かつてヴァンでもリンゴが生産されていた時期には、材料にリンゴが加えられていました(アップルカブット)。現在は砂糖やクルミなどで甘さが加えられます。
この地域で最も古い料理の 1 つであり、3000年前の遺跡の発掘調査でも当時食されていた形跡が見つかったとか。またBC9~7世紀のウラルトゥ王国時代には、戦争中の兵士たちに食されていたともいわれています(→ ウラルトゥ王国については先日の記事へ)
通常はカヴットに蜂蜜・糖蜜・バラのジャムをつけて、パンと一緒に食べるようです。
ヴァンの朝食の中では、個人的にはカヴットが一番のお気に入りでした!
ヴィリク・チョルバ(Virik çorbası)
ヴィリク・チョルバは、ヴァンで食されるレンズ豆のスープ。
主な材料はバター、玉ねぎ、トマトペースト、ブルグル(挽割り小麦)、グリーンレンズ豆、ローストバジル、塩、赤唐辛子、黒胡椒などです。
私が滞在していた当時は知らなかったので食べることはありませんでした…みなさん、私の“無念”を晴らしてください(泣)
インジ・ケファリ(Inci Kefali / Pearl Mullet)
強アルカリ性&塩湖のヴァン湖で唯一棲息している魚(コイ科)、インジ・ケファリ。英語ではパール・マレット、単にヴァンフィッシュとも呼ばれます。
新種が見つかったため、インジ・ケファリがヴァン湖唯一の魚とされたのは実は2018年まで。ですが地元の人にはその事実はあまり知られていません。
もちろん食べることができ、フライ(Tava)と網焼き(Izgara)のどちらもOK! ヴァン以外ではまず食べられないと思うので、訪れた際は絶対食べておきたい一品です。
インジ・ケファリを食べられるレストラン2選
当時は知らなかったのですが、後日Twitterにて情報提供を受け、インジ・ケファリは4/15~7/15まで禁漁期間で漁獲や販売が禁止されていることがわかりました(禁漁前に捕り塩漬け保存したものならOK)。
そのためか私の滞在中(5月)には内陸部(ヴァンの中心部)で提供しているレストランは見つかりませんでしたが、ヴァン湖畔にあるフェリー乗り場(タトワン行き)周辺にはメニューとして用意されているレストランがありました。
私が行ったのは下の写真の「Martı Cafe(マルトゥ・カフェ)」。
周辺には他にもインジ・ケファリを提供しているレストランがあるのでそちらもチェックしてみましょう。
とはいえフェリー乗り場周辺へはヴァン中心部から5キロほど離れており、アクセスは不便です。
(タクシーまたは「İskele」行きドルムシュを利用することになりますが、市内交通の詳細については次の記事を参考にしてください)
そこで今回は特別にヴァン中心部でも特別に食べさせてもらえたレストランをお教えします!
それが「Tulay’in Mutfagi」。
家族経営っぽいこじんまりとしたレストランというか食堂で、もちろんインジ・ケファリが正式メニューにあるわけではありません。
しかし「何かご所望のものは?」とリクエストを聞いてくれたのでインジ・ケファリをお願いしたところ、特別に魚屋から仕入れて調理してくれました。
イズミル出身というお店のおばちゃんは、とても親切でチャーミング。フェリー乗り場まで行くのが億劫な場合はぜひ訪れてみてください。
先述の通りインジ・ケファリは4/15~7/15まで禁漁期間となり、漁獲・保存・移動・販売は禁止されているようです。そのためこの情報を提供してくれた方からは「密猟したものを売っている違法店。ケシカラン!」という趣旨のコメントを頂きました。
ですが以下のような点を鑑みて総合的に判断した結果、私はその可能性は低かったと考えています。
- 禁漁前に捕り塩漬け保存したものであればOK(同情報提供者)
- 1つ目のようにグーグルマップにも載っているレストランでも大々的に提供されていた(メニューに掲載)
- 2つ目のレストランで調理してくれた際に、インスタグラムでシェアをお願いされたこと(犯罪者がそんなことをするでしょうか?)
- 他の料理と比べても相対的に価格が安かった(リスクを取る意味…?)
- 養殖の可能性もある
実は21年に滞在していた北マケドニアのオフリドでも似たようなことがありました。オフリド湖の固有種であるオフリド・マスは禁漁されているはずなのに、扱っているレストランがあまりに多かったのです。メニューにも堂々と載っているので不思議に思い店員に聞いてみると「養殖されたものを仕入れている」という回答でした。→ この時の記事はこちら
とりあえず現時点ではこのまま掲載し続けようと思います。違法なら情報を隠した方がかえって彼らを利することにもなりかねないでしょう。
それはともかくこの情報提供者、いきなり何の挨拶もなしに違法だと決めつけたり、挑発的な文言が垣間見えたりとかなり非常識。そもそも過去のツイートを見ると他人に嚙みつくことが目的のアカウントのようでいろいろと“察した”次第。
情報提供自体はありがたかったですが、SNSとの向き合い方を考えさせられる一件でした。
ウシュクン(Işkın)
標高1800〜2800mで育つスイバ科の植物ウシュクン。
「高地バナナ」とも呼ばれるように、皮を剥いてそのままかじっている人をよく見ます。リンゴの皮に似た酸味と食感が印象的でした。
ビタミンA、B1、B2、C、E、Kが豊富で数え切れないほど多くの健康効果があり、古くから薬用植物として利用されてきました。健康効果についての科学的研究も進んでいるようです。
- 食欲増進
- 消化促進
- 免疫力強化
- 血圧の調整
- 抗がん作用
- 解熱作用
- しわ防止、肌の若返り
路上にて、1キロ10リラ程度で買えます。
コメント
コメント一覧 (2件)
Twitterで中東界隈の話題を色々探していた時、たまたま例の方とのやりとりを目にして、そこからこちらのブログに流れてきました。得意分野の話になると上から目線で断定的な物言いをする方っていますよね…。
それはそうと、トルコは行ってみたい国の一つなので大変楽しく読ませていただきました。ウシュクンは是非食べてみたいです! かなり繊維質な見た目ですが、食感はセロリに近い感じでしょうか?
コメント&先日の件についてのフォローありがとうございます!
ウシュクンはもう半年以上前なので記憶も薄れつつあるのですが、確かにセロリと言われると近いような・・・ただもう少し柔らかい気がします。私が最初に食べたときに想起したのはリンゴの皮でした(笑)
ヴァンに行かれた際はぜひ食べてみてください!