ジロカストラを出発した私は、さらに南下しギリシャ国境にも近いサランダ(Sarandë)へ。
サランダでは数日滞在した後、北上してヒマラ(Himarë)という街にたどり着きました。
ヒマラはアルバニアの南西部の位置する町。イオニア海に面しているためリゾート地として有名です。
近郊には
- リバディ・ビーチ(Livadhi Beach):小石と砂場の中間という感じ。近郊で一番広い
- アクアリウム・ビーチ(Aqualium Beach):小石がメインでこじんまり
- ヤーラ・ビーチ(Jalë Beach):砂場で比較的広い
などいくつものビーチが点在している上、ジペ・キャニオンという渓谷もあります。
ですが、私がここに来た目的はただ一つ。
ヨーロッパで最も美しいといわれる「ジペ・ビーチ(Gjipe Beach)」 で泳ぐ事でした。
しかしそこへ向かうトレッキングの最中、私は恥ずかしいことに遭難しかけてしまったのです…
そこまで本格的な山道でもなかったにも関わらずです(ハズカシイ…)
本記事ではその時の状況や、そこから得られた教訓と遭難のメカニズムについて個人的な見解を書いておこうと思います。
トレッキングに挑戦するも、途中で遭難しかける
ジペ・ビーチまでは市街中心部からはバスが出ているとのことで、早朝7時くらいから待っていました。
が1時間たっても2時間たっても、一向にバスは来ません。仕方なく私は徒歩で向かうことに。
①ヒマラ → ②リバディ・ビーチ → ③アクアリウム・ビーチ → ④ヤーラ・ビーチ → ⑤ジペ・ビーチ
という順路で海沿いに伝っていくことにしました。このルートはトレッキングコースとして知られていたからです(一般的なのはジペ・ビーチから逆にヒマラに戻るコースのようです)。
事前情報では、4時間程度のトレッキングとなるとのこと。
数時間かけ、ようやく最後の道程である④ヤーラ・ビーチから⑤ジペ・ビーチへと続く(と思われた)山道にたどり着きました。
しばらくは日差しを遮るものが何もない山道を歩いていたものの、徐々に茂みの中に入っていき道も狭くなっていきます。
気づけば、半身になったり相当屈まなければ進めないような道を進んでいました。
本当にこの道で合っているのか?と何度自問したでしょうか。しかし他の道が見当たるわけでもありません。
「ここまで来たのだから」というサンクコストに苛まれて引き返す決断もできないまま、ズルズルと道を進んでいきます。
・・・
ですがとうとう、フェンスで囲まれた行き止まりに当たってしまいました。
ようやく道を引き返すことを決断した私。ですが、ここで問題が生じます。
あまりに細い道を進んできたため、どこから来たのかわからなかったのです。
それでも“それっぽい”道を戻ること数分、念のためグーグルマップで場所を確認すると、進んできたであろう道から大きく外れていることに気づきます。
これはヤバいことになった・・・
アドレナリンが一気に放出されるのがわかりました。
周りを見ると、もはや道と呼べるようなものはなく、ただ背の高い茂みに囲まれているだけ。少し動くだけでも枝葉で擦り傷を負ってしまうような、そんな場所に一人立っていました。
そこからはあまりよく覚えていません。
とにかく元の道に戻ることだけを考えました。茂みをかき分け石でできた塀をよじ登り、グーグルマップだけを頼りに道を探しました。
リュックが打ち捨てられているのも見ました。まだ目新しく、かなり不気味な光景・・・
思わず樹上を確認したのは言うまでもありません。
この時の写真を載せたいのですが、精神的に相当焦っていたので一枚も撮れていません。
そして
・・・
・・・
全身傷だらけになりながら、道があるであろう方向に進むことおそらく数十分。
気づくと元の道にまで戻ることができていました。
まさかこんな簡単なトレッキングで遭難しかけるハメになるとは。グーグルマップがなければ、またスマホを持っていなかったり電池が切れていたとしたら・・・ゾッとしながら帰途に着いたのでした。
後日確認したところ、正規のトレッキングルートはさらに海沿いにある別の道だったようです。
私にとって初めて遭難未遂になってしまった今回の経験。
この経験を踏まえ、遭難のメカニズム(要因)がどういうものか自分なりに考察してみましたので、次にまとめてみます。
実体験でわかった!遭難の4つの要因
グーグルマップを過信していた
まずはグーグルマップに表示されている道を過信していたことが挙げられます。
他に道らしい道が見当たらなかったので過信してしまうのも無理はありませんが、まったく疑うことをしなかったのは大きな反省点です。
(私が歩いていたグーグルマップ上の道を画像で掲載しようと思いましたが、再度確認しても表示されませんでした。地図の内容が変わってしまったのでしょうか…)
道の様子が徐々に変化していくので、“異変”に気付きづらい
道を引き返しながら思ったのは、「よくこんな道を進んできたな」ということ。
客観的に見れば獣道同然でしたし、ファーストビューであればおそらく進んでなかったであろう道。
例えば次の写真は実際の山道です。が、パッと見てどこに道があるかわかりづらいですよね?
しかし実際に歩いていると、その変化が少しずつであることから、多少の違和感はあっても「普通の道」のように錯覚してしまうのです。
一時期テレビで、一部分だけ色が徐々に変わっていく写真を見て、それがどこかを当てるクイズが流行ったことがあります。参加者はなかなか気づくことができませんが、あれと同じ現象といえばわかりやすいでしょうか。
最終目的地まであと少しになればなるほど、“あきらめ”が悪くなる
私はグーグルマップ上で常に自分の位置を確認していましたが、この遭難しかけた山道というのは、目的地のジペ・ビーチまで本当にあと少しのところでした。直線距離にしてわずか数百メートル。
しかしこれが“あきらめ”の悪さにつながっていたのは間違いありません。
もはや道とは呼べない道でも、「ここを越えれば目的地へたどり着ける」という期待から歩を進めてしまうのです。
救助要請の心理的ハードルがある
当然、道に迷っているときは救助を呼ぶことも頭をよぎりました。
ですが、いざ救助要請を決断するにもかなり勇気がいるものです。
くだらないかもしれませんが「全国ニュースになったら恥をかく」「日本へも連絡がいくのだろうか」「宿泊先に迷惑が掛からないだろうか」といった懸念が頭をもたげてくるのです。
これは実際に遭難しかけた経験がないと、想像しづらいかもしれません。
遭難しないための教訓3つ
最後に、この経験を踏まえて得た教訓もまとめておきたいと思います。
Maps.meというアプリを入れておく
これまで書いてきた通り、グーグルマップはトレッキングには不向きです。
代わりにMaps.meというスマホアプリがあるので、こちらをインストールしておきましょう。
私は後日アルバニア北部にある集落バルボナからテスへのトレッキングを行いましたが、その時使ったのがこのアプリ。
8時間歩き詰めというかなり本格的なトレッキングでしたが、このアプリに表示されるルートに沿って行けば、道を間違うことはありませんでした。かなり優秀なアプリです。
simカードは持っていく
通信手段がないのは極めて危険です。山中に入るならSIMカードを購入していきましょう。
同時に以下の点にも留意が必要です。
- 日本大使館の連絡先、救援の呼び方などはメモしておく
- スマホの電波が入るかは常にチェック
- スマホの電池切れには細心の注意を払う
ただ特に短期の場合は、そのためだけにSIMカードを契約するのはもったいないと思うかもしれません。
そんな方はグローバルSIMという世界中で使えるSIMカードを保険に持っておくのも手です。
私が愛用しているのは「Surfroam」。世界200ヶ国で使えるプリペイド型のSIMカードです。
レビュー記事もありますので、興味があればこちらも読んでみてください。
怪しい道には入らないか、入っても時々後ろを確認する
本当に進めるのか怪しく感じる道には要注意です。
進むのは簡単そうに見えても、いざ引き返すときにどこから来たのかわからないケースはかなり多いと感じました。
ときどき後ろを振り返りながら、来た道がはっきりとわかるかどうかチェックする癖は付けておいた方がいいでしょう。
さて後日談ですが・・・
今回の遭難未遂直後から左手に骨折したような痛みがあり、見てみると少し腫れていました。
付け根部分にポツポツと数か所傷があるのがわかりますね。
おそらく虫に刺されたか、トゲのある植物を握ってしまったかのどちらにより、何らかの毒が回ったものと思われます。
ただ最初こそ指を曲げることができませんでしたが、2週間ほどで完治したのは幸いでした。
どんな動植物が生息しているのか、これも事前に調べておくとなお良いと思います。
コメント
コメント一覧 (4件)
何はともあれご無事でよかったです。Change Blindnessは興味深いですね。左手、お大事に…。
Change Blindnessというのですね!心理学的にも興味深い事例だと思います。
ぜひケーススタディとして使って下さい(笑)
けいさん 今回も大作ですね。
私もヒマラからリバディビーチまで歩きましたよ 一部道が崩落してて海際まで降りて岩場を歩いてなんとか到着できました いい景色と非日常感で楽しかったのは最初だけでした(笑)
え⁉ めちゃヤバい状況じゃないですか!
ご無事で何よりですが、意外とトラップの多いコースだったのかもしれませんね(笑)