【これぞ旅の醍醐味】ビトラ最終日に超クールな74歳現役のイコン画家に出会う

イコンアトリエ

ビトラ滞在の最終日となる5/28、昼食後にオールド・バザールを歩いていると、一人の初老の男性に声をかけられました。

彼は北マケドニア人のブラゴエ(Blagoje)さん。ビトラ生まれの74歳で、今も現役でイコン(肖像画)の制作をしている方でした。

彼は流暢な英語を話しました。北マケドニアは英語の通用度は高いですが、この年齢で話せる人はそう多くありません。聞けばオーストラリアに5年間住んでいたことがあるとのこと。

ちょうどアトリエの前だったので、中を見せていただきました。

アトリエの内観
アトリエの内観
アトリエの内観
アトリエのワークスペース
作業スペース

美術に関してはかつてロシアのモスクワの学校で本格的に学んだ経験があるとか。

大きさ的にも最も目を引いたこちらの作品、制作期間は4カ月で売値は1,500ユーロ(≒ 244,962円) 。

イコン作品1

正教会の聖人ディミトリオスのイコン、こちらは5,000デナリ(≒ 13,273円) でした。

アレキサンダーのイコン

実は私も趣味で「ヒストリカルフィギュア」の制作をやっていたことがあり、こういう「リアル系アート」が大好きなんですよね~。彼にもその話をすると非常に喜んでくれました。ネットがつながらず、Instagramにアップしてしてある私の作品を見せられなかったのが心残り。

「ヒストリカルフィギュア」とは?

アンデルセン童話の「鉛の兵隊」。ご存知の方も多いですよね? 欧米では古くから親しまれてきた、歴史上の人物をホワイトメタルなどの素材で再現した人形です。小さいものは親指ほどの大きさ。でもその彫刻の細かさは驚くばかり。このすばらしいフィギュアを時間をかけて彩色してゆく大人の趣味の世界をあなたも堪能してください。

ミニチュア・パーク 

ブラゴエさんに後継者はいないらしいです。今の若者にはコンピュータを使った仕事が人気で、このような肉体労働は人気がないと嘆いていました。
ハイすいません、私もその類いの人間です…(涙)

作業デスクの前には若かりし頃のマッチョな姿の写真が。

軍隊時代のブラゴエさん

旧ユーゴスラビア時代に軍隊にいて、その時に登り棒の競技でユーゴ全体でのチャンピオンだったらしいです。上腕筋を触らせてもらいましたが70歳越えとは思えないほどムキムキでした(笑)

話が盛り上がってきたので、バルカン半島でよく飲まれるラキヤ(rakija, ракија)という蒸留酒で乾杯!

自家製のラキヤだそうで、度数50℃。一般的なラキヤは40℃なのでかなり強めですが、不思議と飲みやすくおいしかったですね。

ラキアで乾杯

話を続けていくと、深い教養の持ち主だということがわかりました。

50年以上、ギリシャ・インド・エジプト・中国など古今東西の哲学書や歴史書を読み漁り、思索を深めて来たそうです。本棚には分厚い哲学書がズラリ。私も読書が趣味ですが、薄っぺらい新書がメインのそれとは比べるのもおこがましい(笑)。今でも毎日50ページのペースで読書をしているとのことです。話題はプラトン、アリストテレスからフロイトまで多岐に渡りました。

まさに文武両道、それに加えて芸術家。もはや現代のレオナルド・ダ・ヴィンチですね。

けいさん

言われてみれば風貌も似てる気がする・・・

興味深かったのは、彼はクリスチャンではあるものの、輪廻転生を信じているということ。

実は私も同じです。とはいえ、何かの教義に則して固く信じているというよりは感覚的なものです。言語化が難しいですが、たったいま自分を自分だと認識している、より高次の自分が消えてしまうことが想像つかないんですよね。伝わるでしょうか…。

輪廻転生はインド由来の思想でありヒンドゥー教や仏教にはありますが、キリスト教にはありません。

ただブラゴエさんによると、元々イエス・キリストも輪廻転生の思想を持っていたが、時を経るにつれ政治的な力学が働いた結果、今のキリスト教の終末論ができあがったと。イエス・キリストは17年くらいヒマラヤで修業をしていたことがあり、思想の源流は仏教とそう変わらない部分がある、ということでした。

ラーマクリシュナ
1883年のラーマクリシュナ
出典:wikipedia

インドの宗教家でヨガの達人でもある「ラーマクリシュナ(1836―1886)」も似たようなことを主張していました。

元々ヒンドゥー教徒であった彼は、後年キリスト教を含めた他の宗教も実際に実践し、

“あらゆる宗教は一つに帰する”

との結論に達したといいます。

何を隠そう私も同じ考えを持っていたので、ここでもまた意気投合したブラゴエさんと私(笑)

もうこの時には価値観がそっくりなことがわかり、魂レベルで共鳴するような感覚を覚えていました。

彼はまた、旧ユーゴ時代の方が今より良かったというんですね。今はアメリカの影響が強すぎて犯罪も増えていると。

ここからは話題がかなりアブナイ方向に行ったので、彼の身を案じてここでは詳細は書けませんが(笑)

とにかく話の引き出しが多いので、いつまでも話を聞いていたいと思いました。

ですがお互い仕事がありますし、そろそろお暇の時間…。ビトラに3週間も滞在していたのに、なぜもっと早く出会えなかったのでしょうね(笑)


帰り際に1つ気になっていたことを聞いてみました。「コロナワクチンは打ちますか?」

答えは予想通りでした。
「私には必要ないよ。マケドニア人はみんな打ちたがるけど」と。

こちらも「私も打たないつもりです。日本人はみんな打ちたがるけど」と返し、笑って最後の握手を交わしたのでした。

アトリエの外観
アトリエの外観(ul. SUdska br.2 7000 – Bitola)。
商売気のないところがまたカッコイイ

日本に戻る前にぜひもう一度お会いしたいですね。かねてから飲んでみたいという日本酒をプレゼントしたいですが、果たして可能でしょうか。

とにかくビトラでやるべき宿題がまた1つ増えたのは、間違いないようです。

イコンアトリエ

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