トルコ料理は中華料理、フランス料理とともに世界三大料理の1つとして知られているのはご存じかと思います。イスタンブールにきてトルコの豊かな食文化に舌鼓を打つ…これはもちろん外せないでしょう。
しかし実はそれだけではもったいない。
イスタンブールでは、シリア、イラク、トルクメニスタン、イエメンといった、日本人としては珍しい国の料理を食べることができるからです。
これらの国に共通するのは政情不安や半鎖国状態のために入国が難しいということ。しかし実際にその国行かずとも、イスタンブールに行きさえすればそれらの国の料理を一度に楽めしてしまう…これがイスタンブールの知られざる魅力でもあるのです。
背景にはおそらく次のような事情があると思われます。
- かつてのオスマン帝国が中東を広く治めていた(イエメン、アラブ料理)
- トルコはシリアなど政情不安の国と国境を接しており、そこからの移民や難民が多い(シリア、イラク料理)
- トルコと中央アジア各国は同じテュルク系民族としてつながりが強い(トルクメニスタン料理)
中でもイスタンブール旧市街から西に2キロほどの距離にある「タシュカサップ(Taşkasap)地区」は、激レア国料理のレストランが密集するエリア。
そこで今回の記事では、私が実際に行ってきたタシュカサップ地区のそれらのレストランについてご紹介します。
ざっと調べた限りだと、日本語での情報は初かもしれません。
トルコ2発目の記事にして、いきなりトルコ以外の国のレストランの記事(笑)。すぐに脇道へそれてしまうのは私のサガですのでご了承ください。
【イスタンブールの旧市街とタシュカサップ地区の位置関係】
【タシュカサップ地区の拡大地図(本記事で紹介するレストランの位置)】
トルクメニスタン料理『Alymjan Cafe』
味的にも経済的にも、またそのレア度的にも一番おすすめなのが、この『Alymjan Cafe』。
なんと世にも珍しい(?)トルクメニスタン料理のレストランです。
トルクメニスタンと言えばその名前からわかる通り、トルコと同じテュルク系民族の国家。
かつてニヤゾフ大統領(~2006年)が自身に対する個人崇拝を進めた独裁国家だったこともあり、中央アジアの北朝鮮とも呼ばれるほど閉鎖的な国として知られています。確か自由旅行も難しかったはず・・・
そんな国の料理が食べられるのは、やはり同じルーツを持つ国同士だからかもしれません。
街を歩いていて偶然この店を見つけてしまった私は迷わず入店し、「ドグラマ」を注文。
ドグラマとは羊肉を煮込んだスープに細かく切ったパンを浸した料理。トルクメニスタンの代表的な伝統料理として知られています。
本国ではイスラム教の犠牲祭で食べられるもののようです。
味の方がこれまた絶品!
私は学生時代に中国のウイグル自治区(東トルキスタン)~キルギス~ウズベキスタン~カザフスタンと中央アジアのシルクロードを放浪したことがあるのですが、そこで食べた料理の風味が漂っていて何とも懐かしい気持ちになりました。(トルクメニスタンは未踏破)
お値段の方も40リラと手頃。他の料理もイスタンブールの平均的な価格なので、経済的にもおすすめです。
シリア料理レストラン『Atalarimiz』
次点でおすすめなのが、シリア料理レストランの『Atalarimiz』。
少しこじゃれた雰囲気で、価格帯も少しお高めです。
とはいえシリアは2022年5月現在、外務省から全土に最上級の退避勧告(レベル4)が出ている国。そんな国の料理を食べられるというだけでも訪問する価値はあるでしょう。
現地のアラブ人向けのお店なのか、メニューはアラビア語でしか書かれていませんが、シリア出身のオーナーはかなり上手な英語を話し、懇切丁寧にシリア料理について教えてくれるのでご安心を(笑)
今回は「キッベ」という伝統料理を注文。
キッベとはブルグル(挽割り小麦)の中に羊の挽肉を詰めたシリアの伝統料理で、この店のはヨーグルトに漬けたタイプでした。
羊肉ではありますが臭みもなく脂っぽくもなく、日本人の口に合いそうな味。トルコのケバブに飽きていても問題なく食べることができるでしょう(笑)
特に美味しかったのが「カマルディーン(Qamar al-Din)」という杏ジュース。
カマルディーンは、イスラム教の断食月(ラマダン)の日没後の食事「イフタール」で飲まれるものらしいです。ラマダン期間中にこちらのレストランを訪問することがあれば、ぜひ飲んでみましょう。
またシリアはローズジュースも有名なのでおすすめです。
なにせバラの女王の異名を持つ「ダマスクローズ」はシリアの国花にもなっているほど。こちらのジュースがダマスクローズからできているかは定かではありませんが…(笑)
シリアのデザート屋『Salloura Oğlu』
シリアについてはスイーツ店『Salloura Oğlu』もあったので、立ち寄ってみました。
ハラウェテルジブン(Halawat Aljabn)というシリアの伝統スイーツを注文しようとしたところ、試食させてくれました。
ハラウェテルジブンはクリームをチーズの生地でロールしたアラブ世界のデザート。控えめな甘さでこれは美味い!モチモチしたチーズの食感が“イイ仕事”してます。
ただ直前にかなり多めの食事を摂っており満腹で苦しかったため、本注文することができず(笑)…チップだけ渡して帰るハメになりました。
イエメン料理レストラン『Aksaray Şubesi』
アラビア半島で独特の文化と歴史を持つイエメン。イエメンもかつてのオスマン帝国領であったためか、タシュカサップ地区にはイエメン料理屋が点在しています。
その1つが『Aksaray Şubesi』。
イエメンも内戦状態で入国が難しい国です。その“レア度”だけでも行く価値のあるレストランと言えるでしょう。
今回はイエメン東部のハドラマウト地方が発祥とされる「マンディー(Mandi)」を注文。95リラでした。
マンディーとはタンドール(粘土製のツボ窯型オーブン)で焼いたチキンが乗った米料理。ハワイジュ(Hawaij)というイエメンの香辛料で味付けされているのもポイント。
お米は健康食材としても知られるバスマティライスっぽかったですが、確信は持てませんでした。
肝心の味もなかなかイケます。
米料理といえばピラフとなりバリエーションの乏しいトルコ。これはこれで美味しいですが、少し違った米料理が恋しくなったらマンディーを食べに来るのも手です。
ただし2人分かと思ってしまうほど量が多すぎる点だけは要注意(笑)
イラク料理レストラン『El Bağdadi Mutfağı』
タシュカサップ地区にはイラク料理レストランも点在しているのですが、『El Bağdadi Mutfağı』もその1つ。
これまで挙げたレストランと違って特におすすめというわけではありません(爆)が、「イラク料理」を食べたい方向けに載せておきます。イラクもまた政情不安により入国の難しい国なので、食べるだけでも価値はあるはずです。
「Dolma El Bağdadi」というのを注文してみました。80リラ。
酸味の効いた味が、トルコ料理を一通り食べた後にはほしくなる一品かもしれません。
とはいえドルマはトルコでも一般的に食べられており、あまり違いはわかりませんでした。
以上5つのお店を紹介してきました。どれもこれも日本ではまずお目にかかれない国ばかりなので、少しでもイスタンブールの隠れた魅力についてお伝えできたなら幸いです。
現在、典型的なトルコ料理についても記事を執筆中です。こういった“王道系”のネタはいくらでも情報が出てくるので、果たして私が書く意味がどれだけあるのだろう…と思ってしまうのですが、しっかりと自分なりの付加価値をつけて書き上げたいと思います(笑)
トルコの伝統的な飲み物についてはすでに記事にまとめています。こちらもご参照ください。
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