以前トルコ南東部の都市ガジアンテプのおすすめ土産についてご紹介しました。→ ガジアンテプの伝統工芸系おすすめ土産5選
しかしトルコを代表する美食の街として知られるガジアンテプで第一に紹介するべきなのはその食文化。トルコ特許庁によればガジアンテプ料理として登録されている料理の数はなんと291!しかもそれと同数が“登録待ち”の状態だそうです。
2015年にはトルコの都市として初めて「ユネスコ食文化創造都市(City of Gastronomy)」にも登録され、ユネスコのウェブサイトによれば、労働人口の60%と企業の49%は食品産業に従事しているとのこと。
2022年時点でユネスコ食文化創造都市に指定されているのは世界50都市。トルコではガジアンテプの他に、ハタイ(2017年)、アフヨン(2019年)、カイセリ(2022年)が登録されています
本記事ではそんなガジアンテプのご当地料理を18個ご紹介します。2週間も滞在したため、定番の激辛スープ、ベイランやバクラヴァだけでなく、ボアザルトゥケバブなどあまり知られていない料理まで網羅することができました。こちらの記事で知識を付けてからガジアンテプを味わい尽くしましょう!
記事の最後にはガジアンテプ料理を簡潔にまとめた一覧表もつけてあります。これだけでもかなり便利なのでぜひご活用ください。
スープ系5選
ベイラン(Beyran)
ガジアンテプで最も代表的なご当地料理「ベイラン(Beyran)」。
弱火で長時間(長い時には12時間も)煮込んだ羊肉とお米が入った激辛スープです。ニンニクが多く使われているのも特徴で、心臓病など循環器系の病気に効くと言われています(おそらく唐辛子のカプサイシン効果)。
初めて食べたときは予想以上に辛いと思いましたが、店員曰く「ノーマル」とのこと。なぜかクセになる辛さで、東南アジア的なスパイシーさを求める人なら気に入ると思われます。
ガジアンテプを離れて一カ月ほどたったとき、無性に恋しかったのがベイランでした。何か依存性のある成分でも入っていたのでしょうか(笑)
ユヴァラマ(Yuvalama)
「ユヴァラマ(yuvalama)」は、沸騰したヨーグルトにひよこ豆、お米・牛肉・ラム肉を混ぜたミートボール、ミントなどが入ったスープ。
スープではあるもののメイン扱いで、伝統ではイスラム教のイード(断食明けの祭日)に食されるようです。他都市では見たことないので、ぜひ当地で食べたい一品です。
エクシリ・ウファク・キョフテ(Ekşili Ufak Köfte)
酸っぱくて小さいキョフテ(ラムや牛肉のミートボール)という意味の「エクシリ・ウファク・キョフテ」。
トマトベースのスープでミントやレモンが多く使われており、見た目によらず酸っぱくて辛みはあまりありません。
ピルピリム・アシ(Pirpirim Aşı)
ピルピリムを使ったスープ「ピルピリム・アシ(Pirpirim Aşı)」。
ピルピリムとはその繁殖力の高さから雑草扱いされてきたスベリヒユのことです。
雑草扱いされてきたとはいえ中医学や漢方でも使われてきた薬草で、不足しがちなオメガ3脂肪酸はじめ栄養価は高いと言われています。
トマトベースで酸味の効いた味はなかなかの美味でした。
【春季限定】シヴェイディーズ(Şiveydiz)
先述のユヴァラマ同様、沸騰したヨーグルトで作られる「シヴェイディーズ」。
緑ニンニクや玉ねぎと肉が入ったスープで、こちらもユヴァラマ同様にメイン料理の位置付けらしいです。春の料理だったので、私は時期的に食べることができませんでした。
旅というものは「少しくらいやり残した事があるぐらいがちょうどよい」と自分に言い聞かせています…
肉(ケバブ)系5選
アリナジック・ケバブ(Alinazik Kebab)
焼きナスの上にヨーグルトをかけ、その上に肉を乗せた「アリナジック・ケバブ」。
ガジアンテプ発祥の料理なのですが、今ではガジアンテプだけでなく全国的に食されており、写真のものはイスタンブールで食べたアリナジック・ケバブです。
ガジアンテプ滞在中は当地発祥の料理だと知らず、“本場”の味を試さずに帰ってきてしまいました。
ボアザルトゥ・ケバブ(Boğazaltı)
2022年はトルコの9都市を訪問したのですが、ガジアンテプでしかお目にかかることができなかったのが「ボアザルトゥ」。
その正体はなんとラムの扁桃腺!ゲテモノの類に入りそうですが、プニプニした食感で少しスパイシーな味はかなり美味しいと感じました。
他の部位に比べて安いのですがその理由は「現地の人に人気がないから」というもの。それを美味しいと感じてしまった自分の舌のセンスには自信がなくなってしまいますね(笑)
さらに気になるのは写真の右側に写っている輪っか状の部位。
英語の話せない店主は首の部分を指していたので食道でしょうか?
後日行ったときは品切れで食べられなかったのが悔やまれます…
ビュブレク・ケバブ(Böbrek)
「ビュブレク」はラムの腎臓です。
見た目的には先ほどのボアザルトゥとほぼ同じですが、味や食感はこちらの方が少しレバーっぽいので好き嫌いが分かれそうでした。
キュシュレメ・ケバブ(Küşleme)
「キュシュレメ」はラムの背骨の肉のケバブ。
これもガジアンテプでしか見たことがありません。希少部位のため少し高めで、写真の一皿(写っていないサラダやブルグル付き)が150リラ(1200円)と最高級に入るケバブでした。
肉1つ1つの塊が4~5cm角とかなり大きいのですが、柔らかくて食べやすいです。
アルトゥ・エズメリ・ケバブ(Altı Ezmeli Kebab)
こちらもガジアンテプ以外では見た記憶がない「アルトゥ・エズメリ・ケバブ」。
辛味がベースにありますが、ふんだんに使われたトマトペーストがいい具合に絡んでかなり美味しいです。個人的ケバブ部門では上位に食い込みました。
その他の食べ物2選
【絶品】フィリク・ピラフ(Firik Pilavı)
おそらくアジア人の舌に一番合うと思われるのが「フィリク・ピラフ」。
フィリクとは穂が熟す前に収穫されたデュラム小麦から作られる穀物のこと。
具材として他にブルグルやヒヨコ豆(ノフット / nohut)も入っています。少し歯ごたえのある食感が絶品で、店員に勧められるまま黒胡椒をかけるとまるでアジア飯でした。
単にアジア的な料理に飢えていただけかもしれませんが、個人的にはナンバーワンのガジアンテプご当地料理です!
【レア】マルトゥハル・キョフテ(Maltıhalı Köfte)
本記事でご紹介する中で、もっとも見つけるのに苦労したのがこの「マルトゥハル・キョフテ」。
赤レンズ豆とゴマのミンチボール?です。有名なトルコ料理のチー・キョフテのに似ていますが、柔らかい触感こそ近いものの辛くはありません。
現地の人曰く、これは家庭料理でレストランで食べるものではないとのことですが、ガジアンテプ中心部から西に2キロほどのところにある「Hayad」にて食べることができました。
住所:Gazi Mahallesi,24012 Nolu Cad.Kavaklık Parkı Girişi No: 4, D:1, 27060 Şehitkamil, Türkiye
ウェブサイト:http://www.hayad.com.tr/
少しアクセスに難があるのでここまで来て食べる価値があるかは微妙なところ…
ただレストラン自体はかなりオシャレで評判もいいです。一人で行くとかなり“浮き”ますのでご注意を(笑)
スイーツ・お菓子系3選
カトメル(Katmer)
ガジアンテプを代表するスイーツ「カトメル(katmer)」。
薄い生地に特産のピスタチオとカイマク(トルコ発祥の乳製品)が挟まれ、ピスタチオパウダーがかかったお菓子。パリッとした生地とジューシーな中身がいいコンビです。
ただし現地では朝食として食べるのでかなりの分量。デザートとして軽い気持ちで頼むと痛い目にあいます(あいました)。
また新婚夫婦の結婚が一生続くよう、結婚した初日に食べられるという習慣もあるようです。
ピスタチオ入りのバクラバ(Baklava)
おそらくトルコで最も有名なスイーツ「バクラバ」。アッシリア帝国時代(紀元前8世紀頃)まで遡ると言われる歴史あるスイーツです。
特にガジアンテプを含むアナトリア南部はピスタチオの生産で有名なので、せっかくガジアンテプに来たのであればピスタチオ入りのバクラバがオススメです!
なんといってもトルコはアメリカとイランに次ぐ世界第三のピスタチオ生産国ですからね~
アンテプ・カーケ(Antep Kahke)
サクサク&カリカリした食感が絶妙なクッキー「カーケ(Kahke)」。
甘いモノや塩辛いモノからゴマを使ったものなどいろんな種類があるのですが、ガジアンテプではドーナツ状をした「アンテプ・カーケ」を食べたいところ。シナモンと思われる甘い味が特徴です。
飲み物系3選
ザーテル茶(Zahter Çay)
健康志向の方にオススメしたいのが「ザーテル茶」。
ザーテルとはタイムの一種で、アナトリア中南部で採れるハーブ。胃腸の不調や不眠、上気道疾患に効くと言われます。
少し苦いので砂糖を入れてちょうど良い塩梅。 ガジアンテプではカフェではもちろん、一般的なケバブ屋でも飲むことができました。
メネンギッチ・コーヒー(Menengiç khavesi)
テレビンノキ(Pistacia terebinthus)から作った「メネンギッチ・コーヒー」。メネンギッチ(Menengiç)とはトルコ語でテレビンノキのことで、ガジアンテプに限らずアナトリア南東部でよく飲まれています。
コーヒーとはいうもののノンカフェインで、牛乳を使って淹れるのも特徴。ほんのりとした甘みがあります。テレビンノキには抗炎症効果もあるとのことで健康志向の方にもオススメ。
オットーマンコーヒーの8種類の成分の1つでもあります。詳細は次の記事をお読みください。
ダット・スユ(Dut Suyu)
トルコでは路上で果物の搾りたてジュースを売っていることが多いのですが、ガジアンテプで飲むべきは「ダット・スユ(マルベリージュース)」。
とても濃厚で豊潤な味は感動するレベル。搾りたてというものがここまで美味しいのかと思わず唸ってしまうでしょう!(と同時に市販の“工業製品系”ジュースがいかにマズかったのかも気付かされるのですが…)
ただしトルコで一番おいしかったのは搾りたてのザクロジュース(ナル・スユ / Nar Suyu)でした(笑)
こちらはイスタンブールなど他都市でも飲むことができますので、是非ご賞味を。
ガジアンテプのおすすめレストラン4選
【ご当地料理の品揃えはNo.1】イェセメック(Yesemek)
銅細工屋が軒を連ねる市場(バクルジュラル・チャルシュ)の近くにあるレストラン「イェセメック」。
オススメの理由はガジアンテプの郷土料理が充実していること。2週間の滞在中に見た中ではここがベストでした。
特に5種類のスープがセットになった「Gastronomi Tepsisi」がイチオシ!①ユヴァラマ、②ピルピリムアシ、③エクシリ・ウファク・キョフテ、④ヨーグルトポテトスープ、⑤バターミルクスープをこれ1つでを食べ比べすることができます。
また記事中で「一番の絶品料理」とご紹介したフィリク・ピラクを食べられるのもココです。レストランといってもフォーマルではなくカフェのようなカジュアルな雰囲気で入りやすいのも良いですね。
住所:Şekeroğlu, Hamdi Kutlar Cd. No:51/1-B, 27400 Şahinbey/Gaziantep, Türkiye
ウェブサイト:https://carsimenu.yesemek.com.tr/en
【ド定番】イマム・チャーダシュ(İmam Çağdaş)
本記事でわざわざ紹介する必要がないほど有名な「イマム・チャーダシュ」。1887年から続く老舗店です。
2階まである広々とした店内で、本格的なケバブはもちろんバクラバなどのスイーツも食べることができます。
価格は少し高めですが、さすが有名店だけあってどれも美味しいです。
住所:Şekeroğlu, Uzun Çarşı, Hamdi Kutlar Cd. No:49, 27010 Şahinbey/Gaziantep, Türkiye
ウェブサイト:https://www.imamcagdas.com/
メニュー:http://armenum.com/imamcagdas_antep.html
【カトメル専門店】カトメルチ・ゼケリヤ・ウスタ(Katmerci Zekeriya Usta)
旧市街の中にあるカトメル専門店「カトメルチ・ゼケリヤ・ウスタ」。
著名人も多数訪れているようで、壁にはエルドアン大統領が訪問したときの写真まで飾られていました。評判通りの絶品カトメルにありつくことができます。
住所:Çukur Mahallesi Bay Hilmi Geçidi No:16/C-D, 27010 Şahinbey/Gaziantep, Türkiye
ウェブサイト:https://katmercizekeriya.com/
老舗タフミス・コーヒー(Tahmis Kahvesi)
旧市街の南東部にある老舗の「タフミス・コーヒー」。タフミスとは“コーヒーを焙煎する場所”という意味です。
元々は1638年に建てられたカフェですが、現存するのは1901~1903年に起こった二度の火災の後に再建されたものです。
歴史的な雰囲気漂う内装も素晴らしく、本記事でも紹介したザーテル茶やメネンギッチ・コーヒーを飲むことができます。
住所:Suyabatmaz, Eski, Buğday Pazarı Sk. No:8, 27400 Şahinbey/Gaziantep, Türkiye
ウェブサイト:https://www.tahmiskahvesi.com.tr/
ガジアンテプ料理の一覧表
最後に本記事でご紹介したガジアンテプ料理を一覧表にまとめました。こちらをスクリーンショットで保存したり適宜参照することで“取りこぼし防止”にお役立てください。
ただし個人的に辛党かつヨーグルトベースの料理はあまり好きではないので、そのあたりのバイアスがかかっていることはご承知おきください(笑)
料理名 | 概要 | 味的オススメ度 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
スープ系 | ベイラン (Beyran) | 激辛ニンニクスープ | ★★ | ガジアンテプの代表的料理 |
ユヴァラマ (Yuvalama) | ヨーグルトベースのミートボールスープ | イードに食べる | ||
エクシリ・ウファク・キョフテ (Ekşili Ufak Köfte) | 酸っぱいトマトスープ | |||
ピルピリム・アシ (Pirpirim Aşı) | トマトベースのスベリヒユスープ | ★ | ||
シヴェイディーズ (Şiveydiz) | 緑ニンニクや玉ねぎのヨーグルトスープ | 春季限定 | ||
肉(ケバブ)系 | アリナジック・ケバブ (Alinazik Kebab) | ヨーグルトソースをかけた焼きナス&ラム肉 | 全国で食べられる | |
ビュブレク・ケバブ (Böbrek Kebab) | ラムの腎臓 | |||
ボアザルトゥ・ケバブ (Boğazaltı Kebab) | ラムの扁桃腺 | ★★ | 人気がないので安い | |
キュシュレメ・ケバブ (Küşleme Kebab) | ラムの背骨の肉 | 希少部位なので高め | ||
アルティ・エズメリ・ケバブ (Altı Ezmeli Kebab) | トマトペーストが絡んだラム肉ケバブ | ★★ | ||
その他食べ物系 | フィリク・ピラフ (Firik Pilavı) | デュラム小麦のピラフ | ★★★ | 黒胡椒と相性抜群 |
マルトゥハル・キョフテ (Maltıhalı Köfte) | 赤レンズ豆とゴマのミンチ | 激レアな家庭料理 | ||
スイーツ系 | カトメル (Katmer) | ピスタチオとカイマクを薄い生地で挟んだスイーツ | ★★ | ガジアンテプ発祥。量が多い |
ピスタチオ入りのバクラヴァ(Baklava) | ★ | |||
アンテプ・カーケ (Antep Kahke) | シナモン味のサクサククッキー | |||
飲み物系 | ザーテル茶 (Zahter Çay) | タイムの一種ザーテルのハーブティー | ||
メネンギッチ・コーヒー(Menengiç khavesi) | テレビンノキを使ったノンカフェインコーヒー | |||
ダット・スユ (Dut Suyu) | マルベリージュース | ★★ | レストランではなく路上で売っている |
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