マニラ初日から美人局に遭遇した話

美人局

本記事は2015年にフィリピンはマニラを旅した時の記録です

男の旅人にとって海外での女性との出会いは心躍るものがある。そんな中で美人局つつもたせ(男女が共謀して行う、女の“色気”を利用した恐喝や詐欺)をいかに見抜くか、というのは死活的な問題だ(ですよね?)

今回は私がマニラで経験した、美人局疑惑体験を書いておく。ケーススタディとして心にとどめておくことで、多少のリスクマネジメントにはなると思う。

目次

フィリピン女性との遭遇

マニラ

マニラに降り立った初日、私は17時ごろ宿に到着した後、夕食をとりにアヤラ駅方面へ徒歩で向かっていた。その途中、グリーンベルト5付近の歩道橋下を通りがかったときのことである。iPadで記念写真を撮りあっている現地の女性二人組に写真撮影を頼まれた。

写真を2,3枚撮ってあげると、今からどこへ行くのか聞いてきた。夕食をとりに行くと正直に答えると、一緒に食べようと誘ってきた。
早くも来たか、と思った。この時点ですでに不自然だからだ。

  • 外国人の男に写真撮影を頼んだ上、一緒に食事に行こうなどと誘うものだろうか
  • そもそも歩道橋の下で写真撮影するだろうか

様々な疑問が頭をよぎる。
幸か不幸か、片方の子は自分の好みのタイプである。せっかくの機会を楽しみたいとの思いも断ち切れず、まずは食事くらいはよかろうと、警戒心MAXで一緒に食事をすることに同意した。

アヤラ駅方面へ一緒に歩きながら、他愛もない話をしていた。

二人の名前はシャインとアデルといった。シャインは色白の少しぽっちゃり体系の19歳で、親戚が大阪で暮らしているらしい(もちろん真偽は定かではない)。
アデルは小麦肌がセクシーなおとなしめの女の子で、20歳だった。どうでもいいが私のタイプはこちらである。

第一ラウンド

グリーンベルト5を通ってショッピングモールの「ランドマーク」へ向かう。写真を撮るなどして楽しみながら、ランドマーク一階のフィリピン料理レストランに入った。

レストランではフィリピン料理を教えてもらいながらスープやヌードルなどを注文した。
食事をしつつも会話が弾む。彼女らが実は店側とグルの客引きであり、次々と高額な料理やお酒を注文してしまう・・・最初こそこのような事態を想定していたものの、そんなことはなく、逆にLINEを交換し合うなど、普通の友人関係を求めているような気がして気が緩んだ。

しかし気になる行動がなかったわけではない。シャインが自分のセクシーな水着姿の写真を何枚も見せてくるのだ。しかも意味深な笑みを浮かべながら、である。やはり美人局疑惑は完全に拭えずにいた。ただ、彼女は厳選した写真を見せているつもりだろうが、お世辞にもあまりスタイルが良いとは言えず、正直なところ男心がくすぐられることもなかった。

食事を食べ終わり、三人分のチェックを済ます。さて、この後どのような展開になるのか。

ネオン
(写真はイメージです)

店を出てからはしばらくホテル・シャングリラ付近の広場を散歩していた。このまま解散か、と感じ始めた時、シャインが「フリータイムだよ!お酒を飲みに行こう!」と誘ってきた。

この時点で夜10時頃だった記憶がある。食事を通して彼女たちとの心理的距離は縮まっていたため、このまま宿に戻るのもやや寂しいように思われた。とはいえまだ旅の初日である。マニラの土地勘もまったくない状態のため、即答できずにいた。

すると、シャインは断りもせずにわかにタクシーを呼び出した。

近くのイーストウッドシティというところにオススメの店があるのでそこで飲もうという。どうやら今日12月30日はリサール・デーであり(フィリピン独立運動の指導者ホセ・リサールが1896年同日に処刑された記念日)、イベントをやっているとのことだ。とりあえず行ってからイヤだったら帰ればいいと言われ、そのまま流れに任せてタクシーに乗り込んでしまった。

第二ラウンド

マニラからイーストウッドシティへ

タクシーが走り出すと、急に強い恐怖が込み上げてきた。

まずイーストウッドシティがどこにあるのか見当がつかない。車中で「地球の歩き方」を広げ、急いで場所を確認する。が、そもそもマニラ市内ではなく隣のケソン市のスポット、ということしかわからなかった。思ったより遠い・・・恐怖と不安が一層増した。

マニラの中心部を離れてすぐに暗い夜道の中を走り、やがて高速道路に出た。恐怖のあまり押し黙っていると、そんな気持ちを察してか、シャインがいろいろ話しかけてくるが、適当に受け答えするだけでこちらは精一杯である。

30分ほどでイーストウッドシティに到着した。言われていた通りイベントで多くの人で賑わっており、何だか拍子抜けした。ここなら人混みに紛れていつでも逃げることが可能だ。もう少し一緒に行動して、彼女たちとの駆け引きを楽しんでやろう・・・との気持ちになった。

ナイトフェスティバル
(写真はイメージです)

イーストウッドシティはバーやショッピングモールが立ち並ぶ、若者に人気のナイトスポットのようだ。着ぐるみロボットや、ハリウッド俳優の名前が刻まれた道上のプレートを見学するなどした。

フリーマーケットのようなものも開かれていて、一通り一緒に見学して周った。そのうち二人は各々のお気に入りのアクセサリーを見つけたようで、その場から離れなくなった。嫌な予感がした。明らかに買ってほしそうな空気を醸し出している。しばらく気づかないふりをしていたが、とうとうシャインがアクセサリーをおねだりしてきた。指輪とブレスレットの2つ注文してくるところが図々しい。値段を聞くと700ペソ(2000円程度)と手ごろである。だが好みのタイプのアデルならまだしも、興味のないシャインに、しかも初対面の女性になぜプレゼントなど買わなければならないのか。

どう切り抜けようか思案していると、「オンリー(たったの)700ペソ」、とやたらとオンリーを強調してくる。男のプライドそして日本人としてのプライドをくすぐる戦法である。結局うまい言い訳が思い付かず、ここまでのアテンドの対価のつもりでプレゼントすることにした。この場「オンリー」だぞと、と自分に言い聞かせながら。(この後アデルにもせがまれプレゼントしたのだが・・・。こちらはより安価なイヤリング。遠慮がちにお願いしてきた姿に好感が持てた)

その後ライブバンドのあるバーへ。

Blow Job Glassというカクテルにトライ。火をつけて一気に飲み干すカクテルだ(その時は気が付かなかったものの、今思い返すとかなりハズカシい名前のカクテルですね)。喉が熱くなり、さらに酔いが回った。

カクテル
(写真はイメージです)

ここでもシャインは自分のセクシー水着写真を見せつけてくる。相変わらず全く興奮を誘わないが、メンツを立てるべく、思わず見てしまうよ、と冗談を言って笑わせる(まあ見てしまうのは事実だ)。

先ほどプレゼントしたイヤリングや指輪をつけて楽しんでいる姿の彼女らにカメラを向けても、全く嫌がる様子がなかった。犯罪を企む者ほど写真を避けようとする、との考えがあったのだが、そんな様子は微塵も見せなかった。やはり健全な一般市民なのだろうか。

唐突にシャインが切り出した。

「明日、一緒にプールに行かない?」

またしても男の妄想を駆り立てるワードを盛り込んでくる。詳しく聞くと、シャインが勤めているというシャングリラホテルにプールがあるという。あまり気が進まなかった私は、とりあえずホテルに戻ってから考えるといってお茶を濁していた。

プール
(写真は妄想イメージです)

そしてファイナルラウンドへ

バーで飲み終わった時点で時計を確認すると、夜中12:30を回っていた。

イーストウッドシティはまだ多くの人で溢れていたが、夜も遅いため宿に戻ろうとタクシーに乗った。

が、すぐに様子がおかしいことに気が付いた。アヤラまで帰るつもりだったのだが、どんどん人気のない暗い路地へと入っていく。シャインに確認すると、プールへ向かっているところだという。プールに行くにしてもホテルシャングリラならアヤラ駅方面のはずだ。しかも今日プールに行くとは言っていない。抗議するが、ちょっと見るだけだからと、まったく聞く耳を持たなかった。

するとタクシーは誰一人いない暗い場所で停まった。周りは街灯すらなく、草むらに覆われた空き地だけが確認できた。

暗い路地裏
(写真はイメージです)

シャインがタクシーを降り、すぐそこにプールがあるからちょっと見に行こうと、私の腕をとって降ろそうとした。

とはいえこんな場所にプールなどあるはずがない。遅すぎると思われるかもしれないが、私の中で美人局疑惑が確信に変わった瞬間だった。女性から外国人の男性を食事に誘うという状況、セクシー写真の見せ付け、プールへの強引な誘導、見知らぬ場所でタクシーを降ろそうとしたこと、全てが1つの線でつながった。どこからどう見ても美人局の手法ではないか。おそらく”彼ら”は、ここでシャインと私の二人きりの状況を作り出すつもりだろう。そして彼女のカレシと称するコワイお兄さんが登場し、私をレイプ犯に仕立て上げ、口封じの名目で大金をむしり取る…そんな手口が目に浮かんだ。

もはや次の一手ですべてが決まる。絶対にここでタクシーを降りてはならない…!私は頑なに降りることを拒否した。

だがここまできて彼女らも簡単に手を引くはずもない。シャインは何度もタクシーを降りるよう迫ってくる。

ハンター
(写真はイメージです)

2,3分、降りよう、降りない、と押し問答を続けただろうか。

二人はとうとう諦めたようで、ずっと横に座っていたアデルもタクシーを降りた。二人はここでタクシーを降りるという。家がこの辺りにあるとのことだったがもちろん疑わしい。

そのまま別れを告げ、一人で宿に戻ることにした。
タクシーの運転手が彼女らとグルである可能性があったが杞憂に終わり、無事に宿についたのだった。

教訓を胸に

やはりマニラは噂に違わぬ危険な都市だった。到着して半日でこの“密度の濃さ”である。せっかく現地人の友人ができたと思ったのに裏切られた気がして虚しかった。別れ際の彼女らの目が忘れらない。あれは間違いなく、何時間もかけて捕獲直前まで追い込んだ獲物に逃げられてしまった悔しさにあふれた目だ。

最初から彼女らに抱いていた違和感を無視するべきではなかったのだ。大阪に知り合いがいると言ったのも、LINEを交換するのも、シャングリラ勤務というプロフィールも、全て警戒心を解くためだったのだろう。セクシー写真を見せる、プールへ誘う、などはもちろん、男の下心をくすぐるためである。カメラを向けても嫌がらなかったのも当然だ。最終的に身ぐるみをはがしてしまえば関係ないのだから。

気を引き締めるとともに、“若い女性には特に気をつけるべし”、との教訓を改めて胸に刻んだ。

そして、この教訓が後日さらなる悲劇を招くことになるとは、このときは思いもしなかった。

(続く)

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