前回、ディヤルバクルの観光スポットについてまとめました。クルド人やザザ人、シリア正教会などこの地をより深く楽しむための知識についても同時に解説してあります。
そして今回ご紹介するのはディヤルバクルのご当地料理。
クルディスタンでは他に3都市(マルディン、ヴァン、カルス)に滞在した私ですが、ディヤルバクルでしかお目にかからなかった食べ物や飲み物も多かったのが印象的でした。
特にカシャ(Keşha)という料理をあまりに気に入ってしまい、早く紹介したくてウズウズしていたところ(笑)。2022年7月現在、日本語はおろか英語での情報も見当たらないのでとても貴重な記事が書けたと自負しています。
この記事を読むことで、
- ディヤルバクル名物情報(ラムの串焼き各種、巨大スイカ)
- ディヤルバクル以外で見つけるのが困難なローカル料理(カシャ、クルドコーヒー)
- これらを食べられるレストラン
についてサクッと把握して頂けます。
価格も記載してますが、インフレの激しいトルコのこと、あくまで参考程度でお願いします。
ラムの串焼き4種類
ディヤルバクル名物として一番知られているのがラム(仔羊)の串焼きでしょう。次の4つ部位別に売られていることを確認しましたが、どれも「一皿4~5本」&「パン、玉ねぎ、青唐辛子、サラダなどの副菜」が付いて60リラ程度で食べることができます。
- ジエル(肝臓) ← 定番
- カシャ(胸腺?) ← オススメ!
- ダラク(脾臓)
- ユレク(心臓)
どれも香辛料がふんだんに使われていてピリ辛。激辛ではないのでどなたの口にも合うと思います。1つ1つ順に説明していきます。
ラムの肝臓(Ciğer / ジエル)【定番】
まずラムの串焼きの中で最も定番なのがジエル(Ciğer)。ラムのレバー(肝臓)の串焼きです。
味と食感はよくご存じのあの「レバー」。唾液がなくなる感じといえば伝わるでしょうか(笑) ですので好き嫌いは分かれると思いますが、スパイスが効いているので苦手な方も比較的食べやすくなっています。
旧市街には専門のレストランが多数あるのはもちろんのこと、路上でも売られています。
ラムの胸腺?(Keşha・Keşhe /カシャ)【絶品】
串焼きのレストランに行くと、先述のジエル以外にもいろんな色をした串焼きが並んでいることに気づくでしょう。中でも特に旨いのがこのカシャ。
表面はパリッと焦げていながら中はとても柔らかくジューシー。スパイスがかかっていますが激辛ではなくほどよい辛さ。
元々食べ物に感動することがほとんどない私なのですが、これは例外!間違いなく人生のトップ3に入る絶品料理でした。
絶対に食べていただきたい私イチオシの料理です。
ディヤルバクルの南50キロに位置するマルディンですらカシャは食べられていないと聞いたので、「正真正銘のディヤルバクル料理」と言えそうです。
どの部位なのかが気になるところですが、実は今のところはっきりわかっておりません・・・。現地で聞き込みをしましたが、そもそもディヤルバクルは英語話者がかなり少ない上、話せたとしても説明が簡単な部位ではないようでした。もちろんGoogle翻訳でも出てきません。
Twitterで情報提供を呼びかけたり友人のツテでトルコ人の方に聞いたりして調査中ですが、今のところ最有力候補は「ラムの胸腺」です。胸腺はトルコ語でウイクルック(Uykuluk)と呼ばれ、成長につれてなくなってしまう超希少部位。
ただし現地で以下の体験をしているので、そっくりUykulukとイコールである可能性は低いと思われます。
- アンタルヤで食べたウイクルックはカシャとは食感も味もかなり違った
- ある店にはメニューに「カシャ」「ウイクルック」がどちらもあったが、ウイクルックのみ品切れで注文できなかった
- カシャと次節で説明するダラク(脾臓)やユレク(心臓)は同じ価格だった(超希少部位なのに?)
以上をまとめると、カシャは胸腺ではあるもののウイクルックとは調理法が違うか、胸腺の中の特定の部位を指すものではないか、と考えています。引き続き調査したいと思います。
カシャは現地の方にも人気らしく午前中で売り切れることも多いということなので、食べるなら早めの時間帯が吉。
私が食べたのは以下のレストランですが、他にもあると思います。
Ciğerci Remzi Usta
Cami Nebi Mahallesi, Gazi Cad., Suakar Sok. No:3, 21300 Merkez/Sur/Diyarbakır
Ciğerim Ocakbaşı
Cami Nebi, Hz. Süleyman Cd. No:3, 21300 Sur/Diyarbakır
ラムの脾臓(Dalak / ダラク)
ダラクはラムの脾臓です。
食感や味はレバーに近いので、ジエルと同じく好き嫌いが分かれるかもしれません。
ラムの心臓(Yürek / ユレク)
ユレクはラムの心臓です。
少し弾力のあるコリッとした食感が特徴ですが、ジエル(肝臓)やダラク(脾臓)より食べやすいです。
ラムの串焼き系を注文すると、串焼きの上に薄いパンが乗せられて出てきます。最初はどう食べていいか面喰うかもしれません。
日本の焼き鳥のように串についたまま食べ、一緒についてくる副菜やパンを別々にほおばる・・・これでもいいのですが、現地の人は肉を(内臓を?)パンでお好みの副菜とともに包み、レモン汁をかけて食べています。
そしてこの食べ方の方が美味い!
玉ねぎや青唐辛子のストレートな辛さがマイルドになり、全体としてちょうどいい塩梅になります。ジエル(肝臓)やダラク(脾臓)などクセのある部位でも食べやすくなるのもメリット。
「郷に入れば郷に従え」とはよく言ったものですね。
ピスタチオ・カダユフ(Fistikli Kadayif)
カダユフ(Kadayif)とはトルコでポピュラーなデザート。
そんなカダユフには様々なバリエーションがあるのですが、ディヤルバクルではピスタチオ(Fistik)を使ったカダユフが人気です。
実はピスタチオ生産量がアメリカとイランに次いで世界第三位を誇るトルコ。特にディヤルバクルを含む南部アナトリア地方で生産が盛んだと言われています。
トルコの他の地域でカダユフを食べたことがなかったので比較ができないのですが、ディヤルバクルのカダユフは麵上に延びるところが特徴的でした。遠くから見るとまるで焼きそばを食べているかのようです(笑)
甘さも控えめで、日本人好みだと思います。
巨大スイカ【最大70Kg!】
ディヤルバクルで最も有名な特産物といえば、おそらくスイカ。
8月が旬とのことですが、私が滞在していた5月上旬にはすでに路上に並んでいました。
ただしこの時点ではまだ“本領発揮”していません。
なぜならディヤルバクルのスイカは最大で70キログラム近くまで成長するため。中をくりぬいて子供が入って遊んだりできるというからその大きさは想像を絶します。
5月の時点ではまだ味も美味しくないらしいので私は食べませんでした。いつか旬の時期に戻ってきて食べてみたいものです。
クルドコーヒー(kürt kahvesi)
地元民向けのカフェではあまり飲むことができませんが、旧市街の観光客向けカフェでは一般的においてあるクルドコーヒー。
オットーマンコーヒーと同じく8つの成分をブレンドさせたコーヒーです。
その内訳はいろんな組み合わせがあるようですが、旧市街のお土産屋にあるクルドコーヒーは以下のような成分でした。
- コーヒー
- アーモンド
- ヘーゼルナッツ
- カルダモン(Kuluk)
- テレビンノキ(Melengiç)
- マハレブ
- タイム
- グリーンコーヒー(コーヒーの生豆)
※オットーマン・コーヒーの成分にないものを太字表記
オットーマン・コーヒーよりナッツ系が多いのはやはり土地柄でしょうか?
私はディヤルバクルの他にもマルディン、ヴァン、カルスとクルディスタンの3都市に滞在したのですが、クルドコーヒーが飲めたのはディヤルバクルだけでした。訪れた際にはぜひ飲んでおきたい一品です。
ちなみに写真のクルドコーヒーは、築500年の建物を改装したカフェ「Nostalji Cafe」にて頂きました。
Nostalji Cafe:Cami Nebi, Telgrafhane Sk. 4/A, 21300 Sur/Diyarbakır
カチャク・チャイ(kaçak çay / 密輸茶)
ディヤルバクルに来てこれを飲まずして帰れないと思われるのが、カチャク・チャイ。
直訳すると「密輸茶」。その正体はセイロンティーですが、かつて密輸されていたことの名残で今もこう呼ばれています。
通常のトルコティーよりも濃く苦みの強い味が特徴。
特におすすめというわけではありませんが、ディヤルバクルでは食後に無料で出してくれるレストランばかりなので、名前を知らなくても飲んでいたというケースがほとんどかと思います。(むしろ普通のトルコティーは出てこない。笑)
お土産屋にも売っています。
トルコの一人当たりのお茶の消費量は実は世界一。1日に20杯ほど飲むというから驚きです。
甘草シェルベット / クルドコーラ(Meyan Sherbeti)
ちょっと変わり種が好きという方にチャレンジしていただきたいのが、甘草(かんぞう / Meyan)のシェルベット。
主に南部アナトリアで飲まれ、別名「クルドコーラ」の異名を持っています。
「甘草」の由来の通りほのかな甘みは残っているものの、やはり苦みが強いためあまりおいしくはありません飲みやすいとは言えません。
そもそも甘草は古くから漢方や中医学にも用いられてきた薬草。特に呼吸器系や消化器系の疾患改善に役立つとされており、味を嗜むものではないのかもしれません。
伝統的にはラマダン期間に飲むもので、私の滞在もちょうどラマダン期間中だったためか、旧市街の目抜き通り「ガジ通り」沿いで売っていました。500mlペットボトル入りがわずか5リラ。土産物屋にも売っています。
反対に通常のレストランやロカンタ(大衆食堂)で売っているのは見たことがないです。
他にも「ラフマジュン」「チー・キョフテ」がディヤルバクル名物!
ここまでディヤルバクルのご当地料理をご紹介してきました。他にも実はトルコ料理の「ラフマジュン(Lahmacun)」と「チー・キョフテ(Çığ kofte)」もディヤルバクル名物とされています。
これらはトルコの他の地域でも食べることができるのであえて詳しくご紹介しませんでしたが、時間のある方はこれらも食べてみてはいかがでしょうか?
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